車のカタログを見ているとエンジンスペックの項目で『馬力』と『トルク』の数値が書かれています。
どちらも数字が大きければ『速い』と言うイメージを持ちますが、
実際『何を表した数値』なのか、車を選ぶ上で『どちらを重視すればよいか』ををご紹介します。
トルクとは
まずは、トルクについてです。
トルクは『kgf・m』や『N・m』という単位で表され、エンジンの回転力を示します。
回転力とは・・・?
わかりやすい例えとして、よく自転車で説明がされています。
自転車に乗って、『止まった状態から走り出す時』、『スピードを上げようとした時』に
ペダルを強く踏んで回しますよね。
この『ペダルを踏んで回す力』が文字通り回転力(トルク)になります。
例えば、トルクが大きい人(ペダルを踏む力が強い人)は、
止まった状態からスムーズに走り出すことができますし、
短い時間でスピードを上げることができます。
また、急な坂道でも楽に登りきることができます。
逆に、トルクが小さい人(ペダルを踏む力が弱い人)は、
止まった状態から走り出す時にフラフラしてしまったり、
スピードを上げようと思ってもなかなか上がらないです。
急な坂道ともなれば途中で力尽きてしまい、
自転車から降りて自転車を押しながら歩いて登ることになってしまいます。
車のエンジンの場合も同じです。
実際には、トルクとエンジンの回転数の関係性もあるので少しややこしくなりますが、
トルクの数値が大きければパワフルで加速しやすいエンジンということになります。
馬力とは
次に、馬力についてです。
馬力は、『HP』や『PS』という単位で表され、エンジンの出力を示していて、
『馬力』と言うくらいなので、元々は馬1頭の仕事率を1馬力と定義したものになります。
『馬力』は数字が大きいほどスピードを出しやすくなります。
また、『馬力』とは別にエンジン出力の大きさを示す単位として『KW』があります。
単位を3つ書きましたが、同じエンジンの出力を表していたとしても、
使う単位によって数値が大きく変わってきます。
『KW』(国際単位系)
まず、『KW(キロワット)』は国際単位系(SI単位系)で出力を表す場合の単位になります。
最近のカタログは、だいたい『KW』と『HP』もしくは『PS』が併記されています。
ただ、日本では一般的にエンジンの出力は馬力で話されることが多いので、
『KW』の大きさで話されても、出力が大きいのか小さいのかはわかりにくいです。
英馬力『HP』(フィート・ポンド)
『HP』は英馬力とも呼ばれ、長さをフィート、重量をポンドとする単位系で
出力を表す場合の単位になり、英語の『Horse Power』の頭文字になります。
1HP(英馬力)をW(ワット)で表すと、約745Wになります。
最近では、イギリスやアメリカの自動車メーカーがエンジンの出力を表す時に、
この『HP』の単位を使っています。
仏馬力『PS』(メートル法)
『PS』は仏馬力とも呼ばれ、メートル法(重力単位系)で出力を表す場合の単位で、
フランス発祥の単位になります。
日本では、この『PS』がエンジン出力を表す最も一般的な単位になります。
ちなみに、日本の『PS』はドイツ語の『Pferdestärke』の頭文字になりますが、
仏馬力なのになんでドイツ語?っていうところは触れないようにします。
1PS(仏馬力)をW(ワット)で表すと、約735Wになります。
馬力とトルクの関係
車のエンジンの馬力の値は、トルクにエンジンの回転数を掛けた値で、下の式で計算できます。
ちなみに、下の式の馬力は、仏馬力の『PS』で表しています。
馬力(PS)=2π × トルク(N・m)× 回転数(rpm)÷ 60 ÷ 1000 ÷ 0.735
例えば、5,000rpmでトルクが280N・m出ている場合、出力(馬力)は200PSになります。
最高出力はトルクの大きさと発生する回転数で決まってくるので、
最大トルクの大きさが同じであったとしても発生する回転数が違えば
出力の大きさは変わってきます。
さらに、最大トルクが発生する回転数で、最高出力が発生しているとは限りません。
例えば、下のグラフのような最大トルクが同じ280N・mの
エンジン①とエンジン②があったとします。
エンジン①の最大トルクが発生する回転数が5,000rpmで、
エンジン②の最大トルクが発生する回転数が7,000rpmだったとすると、
最大トルクが発生する回転数でのそれぞれのエンジンの出力は、
エンジン①が200PSで、エンジン②が280PSになり、80PSの差があります。
そして、どちらのエンジンも最大トルクが発生する回転数から、
さらに回転数を上げていくと、トルクは下がっていきますが、馬力は上がっていきます。
オススメのエンジン特性は?
ここまでトルクと馬力について書いてきましたが、
実際に車を選ぶ時に、どこを重視すれば良いかを考えてみます。
当然ながら、車の使い方によってオススメのエンジン特性は変わってきます。
今回は一般的な家庭での使い方(普段は街乗り、たまに高速)で考えてみます。
まず、下のグラフのような最高出力がほぼ同じNAとターボのエンジンがあったとします。
どちらも最高出力は175PS程度ですが、ターボエンジンは低い回転数から
最大トルクを発生することができるので、2,000rpmのトルクは
NAエンジンの1.5倍程度になっています。
街乗りの場合、速度があまり上がらないのと、急加速をすることもほとんどないため、
使用するエンジンの回転数は高くても3,000rpmくらいまでになります。
さらに信号待ちなどがあれば、1,000rpmくらいの低い回転数から加速する必要があります。
トルクの項目で自転車の例えを出しましたが、
トルクが大きい方が止まっている状態からスムーズに走り出すことができ、
さらに短時間でスピードを上げることができます。
この2つのエンジンを比べると、低い回転数のトルクはターボエンジンの方が大きいので、
信号待ちの後の発進ついてはスムーズです。
さらに、そのまま60km/hくらいまで加速する場合でも、
2,000rpm付近で最大トルクが発生するターボエンジンは、
アクセルを少し踏んだだけでもストレスなく加速することができます。
次に高速道路の場合ですが、エンジン回転数が2,000rpm程度で、
90km/hで走行していたとします。
追い越しなどで加速をしようとした場合も、
2,000rpm付近のトルクが大きいターボエンジンの方が簡単に加速をすることができます。
ここまでの話だけですと、
低い回転数でもトルクの大きいエンジンを選ぶ方が良いと感じます。
ただし、出力やトルクの大きなエンジンは、当然燃費が悪くなります。
この燃費の悪化への対応として、
数年前から『ダウンサイジングターボ』が出てきました。
排気量を小さくすることで燃費を良くしつつ、
エンジンパワーの低下については、ターボなどの過給機を使って補っています。
同じ車種で、排気量が少し大きなNAエンジンと排気量の小さめなターボエンジンの
設定があるのであれば、燃費と日常の走行での快適性を考慮して、
低い回転数から大きなトルクを発生することができるエンジン(ターボエンジン)を
オススメしたいと思います。
コメント